足立全康の顔にびびる

 原稿がまだ終わらず、ホテルに篭ってかたかたキーボードを叩き続けている嫁を横目に、私は念願の足立美術館へ出発。最寄の駅から無料送迎バスに揺られること約20分、田園風景の中に壮麗な庭と華構が現れる。庭を様々な角度から様々な大きさの窓ガラスで縁取りし一幅の山水画を幻視させ、館内に収蔵された和の美術品たちと競演させる、というコンセプトはげにすさまじい。外にも中にも芸術。それを分け隔ているのは己の網膜のみ。よほどの道楽を許容する財と情熱と膂力がなければこんなこと無理だろうと想像していたが、美術館の創設者、足立全康の顔を見て納得。男塾塾長か、地下格闘トーナメント主催者か。表社会に生きる傑人でほんとうによかった。
 夜はK先生とおでん屋、F先生はもう三次付近かと思いきやまだ出発されておらず、今回は残念、ということで。それからダブルK先生、奥方、子どもたちと居酒屋へ。恥ずかしがりやのピーチ姫、日本酒に飲まれる。胸突き八丁にキッチンシンク、いや艱難辛苦のK先生、遅くまでのお付き合い感謝。
 お開き寸前にF先生より三沢の訃報。ホテルに帰り、ビールを呷る。これがいけなかった。