『ピダハン』ツイート
- 作者: ダニエル・L・エヴェレット,屋代通子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2012/03/23
- メディア: 単行本
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チョムスキーの理論が立ちゆかなくなる現場に読者は立ち会う。「わたしたちに残されるのは、言語を回転させる機構に過ぎない文法よりも、世界各地のそれぞれの文化に根ざした意味と、文化による発話の制限とが重要視される理論だ」。
文法というメタ言語が通用しなくなる言語の現場(まるでド・マンの世界だ)では、言語心理学より言語人類学こそが問われる。理論から事例を引きだすのは、理論を抽象的に理解したものが理論の理解度を自らに問う以上の意味はない。事例を理解しても理論を理解したことにはならないから。
理論を理解しても事例はことごとくそれを裏切るから。理論は抽象的なまま理解するしかない。そうした理論と実践における断絶がここにはある。けれども、理論の例外は新しい理論を求める。その例外は言語学を、そして人類学を豊かにする。
問われるのは学問だけではない。フィールドワーカーのポジションもまた問われる。逆転移をこれほど鮮やかに描き出した書物を寡聞にして知らない。衝撃のラスト。〆