青レンジャイ板尾

 とある研究会その1。新幹線に乗るとまるで義務感に駆られるかのようにビールを飲んでしまうのだが、生唾を飲み込んで我慢。到着すると駅前がすっかり様変わりしていて、違和感を覚える。大学に着くと、郵便局の横に見知らぬ建物が建設中。ますます浦島太郎になったような気がする(後に大学の医学部が作った歯医者だということが判明)。
 研究室に入るや、これまたびっくり。新型のクーラーが稼動し、脇にはシュレッダー。快適な環境で今朝までかかって大幅に改稿したという原稿を受け取り、さくさく読む。劇的によくなっております。火事場のバカ力が出る人というのはきっと出世しますよ。例外もいますけど。
 本番。初めての発表にしてはかなり上出来のプレゼン。ただ手堅くまとまっているのだけど、手堅すぎてご本人の意見が埋没してしまっている印象。なかなか質問が出ないので先行研究とは異なる独自の意見をプレゼンさせるべく水を向けてみたが出てこない。ヒントをいくつか並べているうちに、フロアが暖まってきたので、フロアに振って無難な形で終了。今後は前半部分を2段落ぐらいに省略して、後半部分を掘り下げてみてはいかがでしょう。
 2本目。オレ哲学。哲学ではない、とおっしゃるが、人間存在とか自己とかを並べる時点でそれが哲学に含まれる問題だということを自覚しなければならない。哲学的な問題を探求したいが、哲学の本は読みたくない、と言っているように聞こえる。あと、風呂敷がでかすぎる。私も時々空を飛べそうな大風呂敷を広げて崖上に立ち尽くしていることがあるが、そのときはだいたい嫁が「飛べるわけないじゃん」とばっさり斬ってくれるので、大怪我しないで済んでいる。この発表の場合、地球がすっぱり入ってしまいそうなくらいでかい。で、テクストの中のいろんな問題をその中にばらばらっと詰め込む。もっと小さい風呂敷じゃないと中に入っているモノ同士がガチガチぶつかり合って壊れてしまう。「人間は成長する過程で…」とか「読者は…ということに気付くだろう」とかいう接着剤でなんとか風呂敷の中のモノたちが暴れないようにくっつけてみたりするものの、なんせその接着剤自体が不良品。だいたい風呂敷がでかい方がよく使うマスターワードでしょう。1本目の発表者とは逆にオレオレ気質が強烈すぎるので、もうすこし人波に流されてみてはいかがでしょう。
 3本目。ホーソンは『緋文字』ぐらいしか読んだことがない不届きものでも、大変面白かった。アメリカ開拓者の神話を神話を書くことで批判するという内容。批判の対象となる神話にはまらない部分が残ることが質疑応答で問題視されていたが、個人的にははまらないほうが面白い。はまらない部分がなければ、歴史の反映になってしまう。むしろ、はまらない部分が神話に別の歴史的側面を呼び込んでいるかもしれない可能性を丹念に追求したほうがいいのではないでしょうか。事実関係に関しては、はるか上空でステルス同士の空中戦が戦われているような感じで、まったく首を突っ込めず。読んでおかないと何もいえないなあ…、夏。
 お好み焼き屋で、翻訳者の苦労と中国人のホスピタリティについて聞く、そして聞く。お開きになってから、すっかり土地の主となった先輩のところに厄介になる。くだらない話をしばらくして→マンキツ(『高校鉄拳伝タフ』を10冊ほど)→「ごっつええ」の「ゴレンジャイ」を流し、就寝。お世話になりました。