悪魔の羽根

 もろもろ。茄子とひき肉の炒め物+きびなごの刺身。

 

悪魔の羽根 (新潮文庫)

悪魔の羽根 (新潮文庫)

 社会人の男女間、友人間の心のズレを四季を背景にして描いた7篇。この人の魅力は、リアルなんだけど少しリアルからズレた非日常的日常あるいは日常的非日常とでもいうべきダブついた世界を提示した上で、最後にその振り子を非日常の極へと一気に振れさせる、という強弱のつけ方だと思う。その点、これはあんまり成功していないような気がする。「ダブつき」が不十分なせいか。ただ最後の「指定席」は佳作。自己充足した内面世界の歪みが虫眼鏡の焦点化された(ただし灰色の)光線のように外部に投影されて、最終的に一気に燃え上がるというか。心理ドラマを書かせたらやっぱりうまいなあ。怖いけど。それから今まで読んだものよりは、風景も絡めた心理の動きを心がけているようで、心なしか奥行きが広がったような。その分、物語自体があれあれな観は否めないけども。