トゥインクル・ボーイ

 もろもろ。久しぶりに大阪焼きを食べに外食。やまいもがうまい。

 
 

トゥインクル・ボーイ (新潮文庫)

トゥインクル・ボーイ (新潮文庫)

 一見したところ普通の子供だったり、普通どころか世間的には「ああ、こんな子供がいたらなあ」とさえ言われているような美しい子供たちの闇をじわりじわりと曝していくような、そんな短編が7つ。表題作は「トゥインクル競馬」でおなじみの大井競馬場が舞台なので、強引に競馬小説として語ってしまうのも可。ただし馬は出てこない。薄暮の情景と一見光輝に満ちた少年の黄昏とがシンクロしてなんともいえない読後感。日常がちょっとずつズレていく著者の真骨頂に触れるなら「泡」もよいが、死体が死体の在り処をやや迂遠して指し示してしまう「捨てネコ」のざわざわっとした感じも捨てがたい。
 大人は汚辱に塗れた大人の世界を隠蔽するために、子供を無垢な存在として表象するのであって、子供が本質的に無垢だというのは幻想(転じて子供を闇属性の生物として語ってしまうのも同じく幻想)ってことでしょうか。子供の無垢な世界にも大人の汚辱が混在しているという、冷静に考えれば当たり前の光景を、顔を覆う両手の指の隙間から覗くような心境か。子供を育てるのって、そういう幻想が立ち消えてしまうような経験なんでしょう、きっと。と同時に、親たちも汚れっちまった悲しみに浸ることになるのでしょう。