夜離れ(よがれ)

 もろもろ。カレイの煮付け、カツオ刺し、鶏肉の炒め物。いかん、砂糖が。
それにしてもホリケンは年々症状が悪化しているような。ある意味天才なのだろうけど。時々素に戻ったりするあたりが、絡みにくさの根源だと思う。

 

夜離(よが)れ (幻冬舎文庫)

夜離(よが)れ (幻冬舎文庫)

 魔性の女を前景化した短編が6篇。二転三転の捻りがあるとはいえないが、作者自家薬籠中の心理小説と考えれば面白い。女性ウケする本だとは思う。男性読者は明鏡止水とはいかない内容。祖父の死を横車を押すように遅延させる女性陣「4℃の恋」。失語症と雄弁の関頭「祝辞」。ストーカーによる語りと語られるアイドルとの間の断層「青い夜の底で」。社内の花形と引き立て役の意識内角逐「髪」。語り手の妄想とも本物の不行跡とも読める「枕香」。止まり木を求めてぐるっと一回り「夜離れ」。個人的には「祝辞」を推す。内に秘めた本音が、あるショックによって倍化し、言葉を失う。失語症が治るや、たちまち増幅した怨念が澎湃と溢れ出す。アイデア勝ち。