不発弾

 もろもろ。鶏の香草焼き。
 湖国のご両親より小包。さっそく赤飯を使わせていただきました。特にお祝い事はないですが。

 

不発弾 (講談社文庫)

不発弾 (講談社文庫)

 著者が書いたにしては、この短編集はハッピーな終わり方をする話が多い。人生どん底に喘ぐタクシーの運転手とある異国のお客との生死を巡る交流を描いた「夜明け前の道」、コンテクストをずらすことでちょっと疎まれている人を福の神にしてしまう「福の神」、栄枯盛衰がつきもののテレビ業界を舞台とした復活譚「幽霊」は、珍しくややカタルシスを得られるお話。転じて表題作は、不発弾が爆発することを最後になって宣言するも結局のところ不発のまま。中学の頃、野球部の友人がしきりに監督から「お前はうちの秘密兵器だ」と言われ続けながら、最後まで秘密だった、というような逸話に通じるものがあるか。痴漢事件を題材とした「夕立」はキレがいまいち。対して人気居酒屋の秘密をひねりを加えて語る「かくし味」は傑作。常連客を中毒にさせる馥郁たる人気料理の香りと味の秘密を探る展開は、ミステリーファンならおなじみのもの(スタンリー・エリンの『特別料理』という作品が有名らしい)なのかもしれないが、読書歴の浅い私には新鮮。ちょっと異界のような雰囲気漂う居酒屋が流行っている例というのは現実にはほとんどないだろうけど、わかっててもそれでも時々入ってしまうんだよなあ。異界といえば、大学時代の住処のすぐそばの居酒屋(ほぼ週2ぐらいのペースで通った)は、私にとって社会の縮図みたいなものでした。ジョッキーの方々と飲んだり、やあさんと飲んだり、市場に仕入れに行ったり、ってオレはバイトか。あのおいちゃん、元気だろうか。店はとっくにないけども。