U-20 日本vsチェコ

 2−2(PK 3−4)でチェコが勝ち抜け。
 チェコは180センチ以上がっしり型の選手をずらりと揃え、総じて足元も巧く、縦のスピードは日本のそれを上回る。特に左右サイドチェンジしながらサイドを抉るMFヤンダは、再三サイドを単独突破してチャンスを生み出す危険な選手。
 対する日本は、柏木・梅崎を中心とした豊富な運動量と献身的なチェイシング、速いパス回しを武器とする。ボランチ青山が高い位置で防波堤となり、奪ったボールを素早く前線に散らして分厚い攻撃を可能にする。基本はサイド攻撃。ヤンダとのマッチアップが多かった日本の左サイド/チェコの右サイドの攻防が鍵となった。
 日本がボールを支配して、時々チェコがカウンターという展開。前半にCK柏木→槙野のサンフレ・ホットラインで日本が先制。後半開始早々、左サイドからのグラウンダーのクロスに詰めた田中とチェコDFが接触。微妙な判定だったが、PK。これを森島がなんとかかんとか決め、2−0。この後も日本の攻勢は変わらず、再三中盤を支配した日本がチャンスを作る。
 しかし、後半20分過ぎあたりから、チェコがリスクを冒して前線の枚数を増やし、捨て身の攻めに出る。正確なミドルを何本か撃たれ、腰が引けたか、日本はここまで展開してきたポゼッションサッカーを捨て、引きこもる感じになる。青山はDFラインに吸収され、攻撃の起点になる柏木・梅崎はほとんどサイドの守備に追われる。こうなると、ボールを取っても前に蹴りだすしかない。必然的にチェコの高さや強さが最も生きる中盤省略の戦いとなり、当然チェコの波状攻撃が続く。安定感のあるGK林も、このぐらいの高さになると限界を露呈。危ない対処が目立つ。すると、本日不安定なジャッジを連発している審判が立て続けに2本チェコにPKを与える。後半開始早々のPKの判定が微妙だったので、帳尻合わせに出たか。審判の裁定基準があやふやなのだから、日本は引きこもるべきではなかった。といっても、2つともファウルといえばファウルなので、やはり前がかりになったチェコの圧力に対する心理的な動揺が影響したか。審判関係なく、メンタル的な問題かも。
 同点となった後は、本来のリズムが戻り、再び日本がゲームを支配するようになる。後半終了間際には、帳尻あわせの帳尻あわせなのか、チェコの10番が黄札二枚目で退場。大して荒れてもいないゲームなのに、なんでイエローを連発する必要があるのか。後半も終盤になってくると、シュミレーション気味に倒れる選手が続出。審判が判定基準をしっかり示せず、試合をコントロールできなかった。ちなみに、延長戦終了後、藤田も退場。これはまあしょうがないけど。
 といっても、PKの頻度や審判に対する不満を除けば、両チーム共に持ち味を十分に発揮した好ゲーム。延長戦は日本が押し気味に進め、体力的にも人数的にも劣勢のチェコはPK戦狙い。PK戦では、闘志むき出しのチェコのGKに気迫負けした感じ。林は、頭染めるか何かしないと、相手にプレッシャーを与えられるような雰囲気が全くない。なんだか世界平和を体現したような容貌だからなあ。まあ、PKは運ですから。
 柏木はこの試合光った。キープもできるし、判断も的確。なおかつ豊富な運動量で取られても取り返すだけのしつこさがあった。柏木・梅崎・青山の絶妙なバランスが消えたあの引きこもりの時間帯だけが残念。なお、日本の左サイドバック・安田は、高い位置で勝負のできるスケールの大きさが魅力。シュートまで行けるサイドバックは貴重な存在。でも、攻撃面でその大きな器を感じさせるものの、守備面は大きなザルといった印象。ちょっと不安定。スーパーサブ・青木は、この試合では1本目のPKに繋がるファウルをいきなりやってしまい、その後もあまり目立たず終わってしまった。けれども、かなりの好素材。ルーニー(は言い過ぎ)のような泥臭いスタイルはそのままでいいと思うが、あとはもっと前で怖い選手になってほしい。高い位置よりも、中盤に降りてきたときの方が目立つのはちょっともったいない。
 全体的に日本チームは、自分の土俵で相撲をとっていれば、かなり戦えるチームだったように思う。日本の目指すサッカーはこんな感じなのでしょう。FWは決定力よりもつぶれ役としての強さや粘り、中盤には華麗さよりも運動量とシンプルな展開力、サイドの選手にはクロスの精度よりも数的不利でも勝負できる力、そしてDFには高さや強さよりも判断力と簡単には交わされない粘り強い守備。個の力を磨いて経験を積めば、フル代表にも入れそうな選手がちらほら。好チームでした。