ポジティブ

 12月に新設、今春に開学したものの、定員150人に対して入学者27人という寂しいスタートになった保健医療経営大学。ところが、入学式での学長挨拶は、大学がおかれた苦境をユーモアでプラス方向へ切り返す逞しさと健全さに満ち満ちている。「この大学を探し出したみなさんの情報収集能力は高い。豊かな大学生活を過ごしてください」。その情報収集能力が、見通しの暗い医療経営の世界で余すことなく発揮されるよう願う。

        • -

 極東のサッカーシーンがようやくイントロダクションを通過しようとしているこの時、欧州のそれはクライマックス真っ只中、興奮の坩堝を映している。チャンピオンズリーグは8強対決の2戦目に差し掛かり、プレミアリーグは残り5試合を残すのみとなった。
 チャンピオンズリーグでは、イングランド4強とバルサ、ローマ、シャルケフェネルバフチェという面々が8強を形成している。
 10日ほどの間にリーグ戦も含めると3連戦となるアーセナルvsリヴァプールが最大の目玉であったが、これまでのところアーセナルのホーム、エミレーツスタジアムにおける2戦はジャブの応酬に終始し、共に1−1という無難なスコアを残している。
 昨年の大虐殺劇の因縁を引き摺るマンUとローマの決戦は、トッティ、ペロッタを欠いたローマが変化と決定力を欠き、ホームで0−2と完敗し、事実上の終戦を迎えた。
 最も無難に突破を果たすだろうと思われたバルサは、シャルケを相手にスコア上は予定調和の0−1で、アウェイでのゴールと勝利を手にしたが、その内実はライカールトの首を飛ばすに足るもので、カンプ・ノウでのジャイアントキリングに含みを残した。
 イスタンブールでは、ジーコの神通力と観客の祈りチェルシーの強固な守備陣を貫通し、1−2という見事な逆転劇に結実した。決勝点をたたき出したカジム・リチャーズの弾丸ミドルは、トルコで伝説になるだろう。セットプレーでの守備に不安のあるチェルシーの現状を勘案する限り、スタンフォードブリッジでもアレックスのフリーキックがあれば勝負になるだろう。
 これらを踏まえて、リヴァプールマンUバルサフェネルバフチェの勝ち抜けをささやかに予想する。
 プレミアリーグに目を移すと、アーセナルリヴァプールによる3連戦を始め、他にもビッグ4の対決が目白押しの終盤戦、加えて降格争いも早々と脱落が決まったダービーを除く数チームの間で激化の一途を辿っている。
 ここに来て上昇気流に乗るのは、チェルシーアネルカが加入、怪我人も帰ってきて、ここのところやや消極的なグラントのタクト次第では、逆転優勝も十分ありうる。シェフチェンコの出る幕のない選手層の分厚さは、プレミア随一。今季を通じて好調を維持するジョー・コールに比べて、やや自分本位のプレーが目立つドログバの復調が鍵か。グラント政権下、求心力の低下は否めず、練習場でも諍いが絶えないと聞く。今季の成績の如何にかかわらず、シーズン後の空中分解は既定路線だろう。
 マンUは、曲芸師的なドリブラーからすっかりゴールハンターと化したロナウド、サイドに流れてチャンスを演出、前線から激しくプレスをかけて主導権を保持するテヴェス、ルーニーを始めとする攻撃陣が絶好調を謳歌するのに対し、ここまで鉄壁を誇ってきた守備陣が崩壊の危機に瀕している。ヴィディッチに続いて、リオ・ファーディナンドも離脱し、正規のセンターバック不在という緊急事態。今季ほとんどを怪我で棒にふったシルベストルやネヴィルはまだ計算できず、ファーガソンは、ブラウン、オシェイというマルチタレントにピケを組み合わせて糊口をしのぐ腹積もりだろうが、今季のベストゲームのひとつとなったボロ戦を見ても守備の不安は依然拭えない。アーセナルチェルシー相手の連戦で無事はありえない。
 今季リーグ戦をリードしてきたアーセナルは、5戦に渡って勝利から見放された2月以降の失速が痛恨の極みで、依然争覇圏内に留まるものの見通しは暗い。ボルトン戦、10人2点ビハインドの絶望的な状況で、中盤を増やし、センターバックを削り、大逆転劇に繋げたヴェンゲルの博打は見事だったが、薄弱な選手層とチーム全体に蔓延する疲労感は深刻で、ここからの上昇は難しい。中でもロシツキーの長期離脱は、局面を打開する力と中盤の中長期的ローテーションを著しく損なった。加えて、怪我がちなファン・ペルシー、チームにおける信頼度が低いベントナー、今季絶望の大怪我に見舞われたエドゥアルドといった攻撃陣の面々を俯瞰する限り、アデバイヨールにかかる負担は尋常ではない。一条の光はスピードスター、ウォルコットだが、試合を通じて消えている時間が長く、球離れも悪い。スーパーサブの地位を甘んじて受けている彼が大化けすれば、おもしろい。
 リーグの争覇圏内から去ったリヴァプールは、チャンピオンズリーグに集中する。先日のアーセナル戦では、トーレスやジェラード、カイト、バベルといったレギュラークラスを軒並みベンチに置いた。トーレスが積み重ねるゴールの数が、唯一の話題か。
 優勝争いは最後までもつれそうだが、願望を込めてマンUを推しておく。
 得点王争いは、アウェイで点の取れないトーレスとチームと共に長い停滞期に入っているアデバイヨールを見る限り、ロナウドで決定だろう。得点と関係のないハイボールに対して競ることはないし、守備はしないし、ドリブルは不調だが、単なる壁当てだったフリーキックは日進月歩の改善を見せて今や相手チームの脅威となっているし、ゴール前での高さ、サイドから中央へのフリーランニングのスピード、そして長短かかわらず精確さに磨きがかかったキックの精度、ヒールなどを使ったトリッキーなボール操作は超一流といっていい。ロナウドのためのスペースを作るべくサイドに流れ、精力的に上下運動と守備をこなしてはロナウドにラストパスを送り続けるルーニーやテヴェスがいる限り、今シーズン公式戦37ゴールという数字はまだまだ加算を続けるだろう。今季はバロンドールに届く。