仕入れと買出しのはざまで

 ゴールデンウィークは長府や唐戸市場のあたりで遊んでくることにする。あそこの回転寿司は安くて旨いと評判なので、ぜひいってみよう。
 そういえば、唐戸市場には、かつて大学時代、下宿の2件隣にあった居酒屋のおっちゃんと一緒に何度か仕入れに行った。鯨ベーコンってこんなに高いのか、と思い知った。店に帰って、仕入れたものを肴に、昼過ぎまで飲むのがまた楽しみであった。よくよく考えてしまったら、学生がコンビニでつまみを買ってきて、家で飲むのと何が違うのだろう、と訝らずにはいられなくなるので、よい思い出として不問に付すことにしよう。
 
 最近観た映画。

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 前者はアカデミー賞でも話題になった作品で、「スプリームス」をモデルとした同名ミュージカルを映画化したもの。フォックスの看板番組「アメリカン・アイドル」出身のジェニファー・ハドソンを抜擢、ビヨンセを食ってしまう強烈な存在感。『レイ』で好演したジェイミー・フォックスがここにもいたり。
 「スプリームス」に関しては、ダイアナ・ロスがいた、ぐらいの知識しかなかったが、そんなことは全然関係なく楽しめた。歌唱力が圧巻。時代背景を巧みに織り込みながら、歌と人物関係、黒人の文化政治がシンクロする様は壮観*1。成功の夢が具現化するにつれて、 "cross over" を追求しなければならず、そうすると今度は白人聴衆の嗜好に寄り添いすぎて、自分たちのやりたい音楽ができなくなっていく、というジレンマ。そうしたジレンマが、始めは人種間関係として描かれ、やがて人種内部の階級関係、直接的にはメンバー間の不和やすれ違い、メンバーの脱退・加入として表現される。すべての生き方を多様な夢の発現として全肯定しつつ、新しい一歩を踏み出すところでフィナーレを迎えるあたりは、極めてアメリカ=ハリウッド的と突き放すこともできるかもしれないが、それでもあんまりベタベタした感じがないのは、やっぱり登場人物たちのパフォーマンスが素晴らしいからだろうと思う。ジェニファー・ハドソンの二の腕のダイナミズムも見所のひとつ。
 後者は・・・。久しぶりにフルスイングの空振りを味わった。「コーエン弟の幻の脚本」という触れ込みだったが、幻だった理由がよくわかった。昼は整体士、夜は骨や内臓をリアルに書き込んだボディスーツを纏ったプロレスラー、というコンセプトは面白いのに、途中事件が起こってからうやむやになる。笑える箇所はそれなりにあるのだが、畳み掛ける感じがまるでない。単発の笑いがぽつぽつとあるだけ。うーん、やっぱり敵役もプロレスラーとして設定したら、焦点が定まったのではないかと、ちょっと思う。

*1:キング牧師の演説やデトロイト暴動など。レコーディング中に不満が爆発して外に飛び出したらデトロイト暴動の暴徒がいたり。音楽と政治はどうしても地続きにならざるをえない、という作り手側の批判的な意識があるのか。