たばこと大統領選

 朝刊をめくると、たばこ増税のコラム。びくびく鼠伏する愛煙家による切歯扼腕の遠吠えか、生殺与奪の権を握った嫌煙家による見る目嗅ぐ鼻の追及か。辟易しながら読んでみると、情感たっぷりに煙草を取り巻く情勢と思い出が浩然と綴られていた。趨勢の不可逆性は認めつつも、水も漏らさぬ構えで、やれ増税、やれ禁煙、と杓子定規を煙草に向けて振りかざすのはいかがなものか。こちとら、明日には杓子定規で煙草を切り刻んで吸わなければならないかもしれない身でございます。奪衣婆に脱がされた上着に煙草が入っていたら、その分罪が重くなるなんていう非情な御沙汰、勘弁願います。
 夕刊をめくると、オバマ特集。猿谷要のこぼれ話が面白い。1968年のある日、数機の機影からたなびく飛行機雲が "THIS TIME NIXON" と綴っていたという逸話。人種差別反対の論陣を張ってピュリツァー賞を受賞したラルフ・マッギルが、ケネディ当選の一報を受け、喜び勇んで新聞社にあった大砲のミニチュアを道路に持ち出して発砲したところ、煤で顔が真っ黒になったという逸話など。