泳いで帰れ

 

泳いで帰れ (光文社文庫)

泳いで帰れ (光文社文庫)

 ギリシャに行きたいという欲求を全く喚起しない、けれど異文化体験を満喫した気分になる、稀有なアテネオリンピック観戦記。
 料理がどれもこれも塩辛くて食えたもんじゃない、というのは、頷きすぎて千切れた首が背中を舐めるほどに首肯する。伊太利亜の料理店は、どこも前菜からメインまで全部塩味だった*1。数種類のハムが山積みになったハムの盛り合わせも、同じハムを食べている、と感じられる間はまだ幸せな方で、そのうち塩を飲んでいるような感覚に襲われ、吐き気がしてくる。イタメシ屋で海難事故などシャレにならない。マルゲリータにしても、ああマルゲリータ、という郷愁が、いつまでマルゲリータ?、という絶望的な既視感にすり替わるのにさほど時間はかからない。彼の地の人々は、背中のむず痒さを紙やすりで鎮めるような「大は小を兼ねる」精神を骨の髄まで染み込ませているようだ。孫の手が介在する余地はない。対して、マクドナルドはどこでも楽園だ。
 ちなみに奥田は、北京オリンピックも現地観戦する、と宣言している。かっこいい、と星野を礼賛する中日ファンの奥田が、星野ジャパンのあれをどう処理するのだろう。私は、あと少しの所で星野真理すら嫌いになってしまいそうなほどの星野嫌いなので、続編をたいへん楽しみにしている。

*1:旨い料理を出す店も中にはありました