ゴールデンスランバー

 サザエさんみたいな毎日。

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

 監視社会が実現した近未来の仙台で起こる首相暗殺事件。濡れ衣を着せられて追われる男。ノスタルジック路線の集大成(?)。ケネディ暗殺、ビートルズのある楽曲、特にその中の一節 "Once there was a way to get back homeward" を下敷きにしている。草むらに放置された廃車をめぐるエピソードがとてもいい。晴子とその娘の意味なさそうに見えて意味ありげなやりとりがいい。
 ミステリファンとしては、フーもハウもホワイも全部擲って逃げ続ける物語に不満が残るといえば残る。だけど、そういう物語の夜逃げ自体がちゃんとテーマを裏打ちしている。
 三十五賞を辞退したのはもったいない。けど、もうこの人に賞は必要ないかも。