イニシエーション・ラヴ

 タバコ屋のおばちゃんに来年の星回りについて書かれた冊子を貰う。それによると、来年は人生の絶頂期らしい。裏を返せば、再来年以降、下り坂ということ。せつないの。

 

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 評判がいいので読んでみた。バブル期静岡・東京を舞台にした平凡な青春ラヴストーリー。なのだけど、実は技術点の高いミステリ。鈴木と繭子が初めてのセックスに臨む場面である程度の路線図は思い描いていたのだが、その路線から脱線することなく、むしろそれを複線化する巧緻な語り/騙りに脱帽(というとネタばれしているような気もする)。三人称とは違って、一人称の叙述トリックは難易度が高いと思う。再読すると面白さが倍増する。でも、物語の内容がもっとおもしろければ、なおよかったのに。というのは、ないものねだりか。