さらわれたい女

 花粉だけかと思いきや、どうやら黄砂もあたりに舞っているらしい。そういえば、心なしか稜線の霞みに黄色が混じっているような気もする。ぶえくしょん。クシャミの副産物、魔女の一撃に注意。

さらわれたい女 (角川文庫)

さらわれたい女 (角川文庫)

 借金まみれの便利屋のもとに、ガルボ・ハットを被った社長夫人がやってくる。「私をさらってください」という前代未聞の依頼。狂言誘拐を利用して一儲けたくらむ便利屋だったが、思わぬ展開に。という感じ。
 法月綸太郎の解説が指摘するとおり、岡嶋二人テイストの誘拐ミステリ。なるほど、島田荘司だけではなく、岡嶋二人にも影響を受けていそうだな。
 推理というより、サスペンス色の濃い作品で、この辺で培った読者の関心/歓心を買う技術が今の歌野の血となり、肉となっている観がある。骨はもちろん本格ミステリのメンタリティ。今回はトリックではないが、バカミスぎりぎりの変なキャラクター(便利屋)が主人公として登場する。なんだこの舞城的自意識。サスペンスで笑いをとるなんて、チャレンジング。
 ところで、舞城で思い出したが噂の『ディスコ探偵』はいつ読もう。チャクラが開く日をひたすら待っている。