最近のできごと。
 西の朋友に歓待を受けたり(お世話になりました)、辛子高菜の分量を上島竜平的に間違えてバルブに小さな裂傷を負ったり(やっぱり)、桜を見に行ったら出店がひとつも開いていなくてそのまま素通りして本屋で本を一山買ったり(何をしにいったのだ)、チヂミをつくろうと具材を混ぜていたらだんだん丸まってきていつの間にかこね回しててそいでもってぷっくり膨らんできて夜八時にパンを焼き始めるかどうか家族会議を開いたりした(薄力粉と強力粉は兄弟ではない)。ちなみに、煮物に酢を入れてしまったならばオレは妊婦だと自己暗示をかけるしかないが、この場合、薄力粉を投入すればモッチリ度二割増しのチヂミができあがる。怪我の功名。
 そしてひさしぶりに風邪をひいた。鼻と咽喉が出会う場所がトゲトゲしている。頭もだんだん痛くなってきた。
 最近読んだ主な小説。
 『そして誰もいなくなった』+『リプレイ』の『リピート』(乾くるみ)、直木賞候補にもなった伊坂幸太郎的、というか『グラス・ホッパー』の一部をうわんと広げて伊坂色に塗ったコン・ゲーム小説『カラスの親指』(道尾秀介)、並行して語られる2つの物語のタイムラグを利用してあっといわせる(予定だった)本格ミステリ『慟哭』(貫井徳郎)、解説の解像度が高い『弥勒の掌』(我孫子武丸)、まさにオースター的テロ小説『クリスマス・テロル』(佐藤友哉)、中盤まではとてもおもしろい昨年の「このミス大賞」受賞作『臨床真理』(柚月裕子)、とにかく走るだけ走るエンタメ『世界は密室でできている』(舞城王太郎)といったところ。
 ベストは『噂』か。広告業界の「女王様」が香水を売るためにでっちあげた都市伝説、そして連続殺人。妻の死をきっかけに所轄に都落ちしたベテラン刑事と夫の死をきっかけに本庁で昇進を果たした新米女性刑事、というでこぼこコンビがいい。女子高生の会話もリアル。どんでんがえしも鮮やかならば、ちゃんとヒントも書き込まれていて読み返してああなるほどと二度おいしい。「女王様」の口コミにひっかかるのは、香水の購買層となる女子高生たちではなく、販売側の大人たち、というのは、広告業界で働いた経験をもつ作者ならではの皮肉か。とにかく巧い。

噂 (新潮文庫)

噂 (新潮文庫)