向日葵の咲かない夏

 昼過ぎから悪寒が背筋に走り始め、夕方には布団をかぶってぶるぶる震えている有様。ひさしぶりの熱発はゆっくりと山を登って、八合目付近で落ち着く。今夜が山だ。やおら冷蔵庫で眠っていたピカチューの冷却剤(どこで貰ったんだろう)をヘアバンドで括りつけ、ジキニンを飲んで寝ようとするが、寒かったり熱かったりで眠れない。しょうがないので朦朧とした頭で『向日葵の咲かない夏』を読む。
 小学生・ミチオくんが先生から頼まれて届け物をクラスメートの自宅に持っていく。呼び鈴を押しても応答が無いので、庭に回ってみると、クラスメートS君は首を吊って死んでいる。ミチオくんは学校に戻って先生に報告、先生は警察に通報し、現場確認が始まる。ところが、警察が到着すると死体は消えている。はて。4歳になる妹のミカちゃんの協力も得て、事件の真相解明に乗り出そう、とミチオくんの決意がマッシュポテトくらい固まった頃、S君がある姿に生まれ変わって目の前に現れる。という、輪廻転生のテーマをえげつない挿話で脚色した(文体は全然違うが)乙一的ホラー・サスペンス系ミステリ。輪廻転生や祈祷といった幻想的な非合理性は、(非合理的で主観的な)合理性へと、京極堂的にしっかり回収される。かなりえげつない話なので、好き嫌いは大きく分かれるだろうが、文字通り熱にほだされていたせいなのか、個人的には「やってやろうじゃん精神」に満ち溢れた佳作なんじゃないかと思った。若手作家の「命がけの跳躍」を私は大いに買う。
 日付も変わって3時ごろ、読了したところでようやく平熱に戻る。頭は朦朧としたままでも心は熱の余韻のせいか沸点付近をさまよっていたので、そのままマンUポルト戦を観る。CL数試合を観た印象でいうと、フッキは確かに鳳雛の資格十分だが、まだone of them。クセが強いので、研究されたら多分ドリブルで抜けなくなるだろう。朝飯を食うと、糸が切れたように脱力し、眠る。

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)