世界は深い

ニーチェ全集〈9〉ツァラトゥストラ 上 (ちくま学芸文庫)

ニーチェ全集〈9〉ツァラトゥストラ 上 (ちくま学芸文庫)

ニーチェ全集〈10〉ツァラトゥストラ 下 (ちくま学芸文庫)

ニーチェ全集〈10〉ツァラトゥストラ 下 (ちくま学芸文庫)

 ひたすら大地の上を歩き続ける。立てては崩し、流れては淀み、褒めては腐す。涯てに深淵と出会う。深みの啓示。束の間の快楽で口を糊し、また大地の上を歩き直す。
 虚心本を読むということ、虚心なにかを書くということ、<他者>に触れるということ。『ツァラトゥストラ』を何度も歩き直すということ。
 
 

[中略]私はそこいらにいる男たちとかわらない、共同社会の、町の、国の一員になった。違うところといえば、私には「成功する」ことへの関心がなく、家族や家や、りっぱな職業を欲しがらない点だろう。そうして今日に至る。インテリでも芸術家でもない。救いになるようなルーツも持たない。何とも分類できない宙ぶらりんの状態にいる。そういうことだ、ここに狂気のはじまりがあるような気がする。ありきたりの狂気の物語 (新潮文庫)