殺風景
寒い。
冬には弱くない。気温はそれほど低くない。でも寒い。ジャックナイフみたいな風が、服の隙間を抉ってくる。無抵抗に刺される。刺され続ける。
それでもよく歩いた。病院に行った。どん底を知っているので、それに比べたらまし、みたいな話。
居酒屋の昼定食を、と思ったら、入口は開いているのに店は閉まっている。水面下に留まるやる気など、気づかれるはずもない。夜の営業は月の三分の一ほどに抑え、空いた時間はトライアスロンなど趣味と道楽に費やしているおじさんのこと、これまで皆勤だった昼の営業に邪な手心を加えたとしても今さら驚かない。
ブックオフで村上春樹とカレル・チャペックに出会い、「ビッグ・ボーイ」で昼食を摂り、二時間の読書。村上春樹の話になるとなんとなく雰囲気で頷いているだけ、という同世代人から逸れたわたしでも、最近、なんとなく村上の本が読めるようになってきた。少しは童心に還ることができるようになった、ということだろうか。はて。
走ることについて書かれたエッセーを読みながら少しずつ加速して、『アンフォルム』を40ページほどゆっくりそぞろ読む。今日はときめかない。早々に切り上げて、買い物して、帰る。
それにしても寒い。
来月の今頃、パリのナイフもジャックだろうか。それともミシェル、あるいはジョルジュ・・・。
もうワンランク上の防寒着を希う。