蛍川

 ぎりぎりまで削る。これ以上削ると、内容的にしょぼくなってしまうのでここらへんで。
司会の先生に添付で送る。
 

蛍川・泥の河 (新潮文庫)

蛍川・泥の河 (新潮文庫)

 引き続き、『蛍川』。今度は富山に舞台を移し、変則的な家族関係の絡まりを描いている。死にいくものとこれからも生きていかなければならないものとの間に横たわる不条理を、思春期の初恋や友情が入り混じった三角関係とシンクロさせながら描き出す筆致は秀逸。川が友を殺す切断面であると同時に恋心を抱く相手との逢瀬を演出する接合面でもある、というその記号としての振幅を、最終場面の蛍のどこか儚げな欣喜雀躍に昇華させていく。非常に芥川賞っぽい作品。