世界をよくする現代思想

 読書三昧。<とりあえず5日分UP>
 
 

世界をよくする現代思想入門 (ちくま新書)

世界をよくする現代思想入門 (ちくま新書)

一生懸命易しく書こうとしているが、どうにも収まりの悪い箇所が散見される。けれど、用語の定義や思想家同士の影響関係みたいな知識の話に終始するのではなく、いろんな思想家の問題意識を掘り下げて解説しているので、なかなかいい解説書かもしれない。構造主義からポスト構造主義への流れも○。目的と対象とが一体となるのが現代思想構造主義は予め合意がある場合だけ有効。関係の固定化から流動化へ。などなど。結局、「世界をよくする」というのは多くの点で問題を抱えている、ということが明らかにされる。世界って何?どのようにしたらよくなるの?誰にとっていいの?今のところ、主体は無限に広がる他者の関係の網の中に遍く拡散しており(つまり主体は個に還元されない)、それこそが世界である、というのが理論的前提としてあるけど、実践の場ではそんな大きな世界を想定して全てを変えるわけにもいかないから、ローティのようにとりあえず自分の身近なところで線引きしてそこから変えていきましょう、ということになっているらしい。主体の扱い、それから身体の位置づけ、そしていかに実践するか、そこらへんが当面の大きな課題のようだ。ちなみに、文中太字になっている語は巻末の用語集にてとりあえずの説明してあります。ブックガイドも少なすぎるけどついています。なかなかいい解説本。