フランケンシュタイン

 嫁に袖を引っ張られることもなく、およそ6年ぶりのキャンプ(といっても貸し別荘)に出かける。夜半、フェリーに乗り込む。船中泊。寝ようとしたら隣で赤ん坊が泣き出し、眠れなくなる。2等船室に赤ちゃん連れてくるのは反則ですぜ。しょうがなく喫煙コーナーで申し訳程度に灯っている灯りを頼りに、読書。5時ごろ到着。フェリー乗り場で若干の仮眠。

 

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

 『フランケンシュタイン』の多様な読みと膨大な先行研究を手がかりに、読書とはなんぞや、批評とはなんぞや、と問うてみる好著。前半は、やや理論的な部分にも目配りしつつ、「素養ある読者」へと本書の読者をイニシエイトする。ストーリー/プロットとか物語世界内的語り手とか。記憶の片隅を刺激する。後半は、読者を批評の世界へと誘う。読者反応批評とマルクス主義批評のところが個人的には面白かった。「透明な批評」の存在は寡聞にして知らなかったが、これほど隅々までひっくり返されたテクストを批評するとなると、一巡りして昔に返るのも逆に新鮮かも。いずれにしても、星の数ほど先行研究がある『フランケンシュタイン』と先行研究をサーヴェイできる「素養ある研究者」である著者との間に幸福な関係があってこそ、本書のような仕事ができるのであろう。たかだか1000や2000の先行研究ごときにビビッている場合ではない、と自分に言い聞かせながらも、つまみ食いでいいですか?と誰かに許しを請う自分に逆らえない。