insideの謎

 もろもろ。昼過ぎ、15分ほど未曾有の暴風雨に襲われる。一瞬、晩飯はそうめんだな、と割り切るも、すぐに止んで拍子抜け。梅雨ってもう少しダラダラした感じではなかったか。やけにメリハリがきいている。蒸し暑い。いかと大根その他の煮物。

『先生とわたし』書評by高山宏http://booklog.kinokuniya.co.jp/takayama/archives/2007/07/post_6.html

 あるワインのラベルより。

Today, make it attend a wedding reception, and thank you for the very busy inside. Please guide it from now on though they are two people who are still inexperienced.

 共感力の限りを尽くしても、 "inside" が何なのか、見当がつかない。
 困りに困って、excite翻訳にかけるとこうなる。

今日、結婚披露宴を出席させてください、そして、非常に忙しい内部をありがとうございます。 彼らは2人のまだ未経験な人ですが、これから先、それを誘導してください。

 つまりこういうことか。

本日、結婚披露宴にご出席いただき、また大変お忙しい、ありがとうございます。今後とも未だ未熟者ではございますが、ご鞭撻の程よろしくお願いします。

 
 真面目すぎるな、日本人は。

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 閑話休題http://d.hatena.ne.jp/drydeniana/20070709に件の講演会のレポートが。ブリリアント。大変勉強になりました。ありがとうございます。
 サイードをちょっと復習。サイードは『人文学と批評の使命』の第5章「作家と知識人の公的役割」(続『知識人』のような論考)において、パスカル・カサノヴァの

グローバル・システムとしての文学は、それを成立させているグローバル・システムに対して、ある種の統合された自律性をもち、政治制度や言説といった粗野な現実を超えた位置に置かれている

という現状認識を批判し、すでに「自律性」とか「超えた」では説明できないような形で、作家/知識人の区別なく、人文学はグローバリゼーションに「巻き込まれている」と言っている(160)。結果、「主要な発言の経路がすべて、最強の勢力に、つまりまさにわたしたちが抵抗し攻撃している相手によって押えられているのは事実」とした上で、サイードはグローバリゼーションを利用して「沈黙」、あるいは「静寂」を強いる支配的な勢力に対抗するために、「発言」を重視する。
 ではどう「発言」すればよいのかというと、サイードは、1.「過去の消滅を防ぎ、過去を保護すること」、2.「知的労働の結果として、戦場ではなく共存の場を作り上げること」、そして3.「議論の相手[中略]が目の前にいて自分の文を読んでいるのを、思い描く」こと、あるいはアドルノに倣って「それこそが目の前にあることだと言い切る勇気」、という主に3つの方法を挙げる。
 スピヴァクのお話は、やはりdrydeniana様が指摘しておられるように、サイードの提言を別の角度から掘り下げたものであるような気がする。2.は空間的なことについて語っているわけだが、その共存の場というのは引きこもったりするための場所ではなく、グローバルに拡大する「権力と資本の巨大な蓄積」と密接に関係した場所を指す。スピヴァクは、まず2.を前提として、1.のように先へ先へ進もうとするグローバリゼーションの未来志向に待ったをかける「ゆっくりした変革」を提起、あるいは3.のような「想像力」を「哲学的営為」と「文学的営為」へと分節化し、有効な戦略として再定義しているような印象を受ける(ちょっと強引過ぎる引き付け方のような気も)。
 サイードは、そうした沈黙に抗う3つの方法の基礎として「外挿的に発明(invent)され」た目的について語っている。といっても、それは "invented tradition" のような意味ではなく、re-dis-cover-ing、あるいはre-edit-ingのような意味で、本書の第4章で主に展開されるアウエルバッハ的文献学への回帰とも関連してくる(と思う)。断片として散逸した過去の人々が語る「意識の輪郭」を渉猟し、編集し続けることで浮かび上がってくる目的。それはもの凄く手間のかかる作業で、気の遠くなるほど時間がかかる難事で、グローバリゼーションが進行するオートマティズムと未来志向の世の中にあってはほとんど無意味な営為に見える。けれども、だからこそその「ゆっくりさ」が画一的なグローバリゼーションに対する余計だけど必要な「代補」として有効なのだということか。
 いつもに増してとりとめない(そしておそらく的外れな)駄文になってしまった。スピヴァクさんには「危険な代補」について伺いたいところ。まだまだもやっとしているので、ここは「ゆっくり」と寝かしておきたい。スピヴァクもそうですが、サイードもまた読み直してみないといけません。

 [追記] 私的メモ。表象のギャップを埋める「想像力」。例の戦略に接続するか。想像力に対する支配体制。グローバリゼーション。奴隷制。覆いを外す。もう一度検討してみる価値アリ。