父親たちの星条旗

 もろもろ。掃除。管財。応急処置。後日、修理。弁当。


 

父親たちの星条旗 期間限定版 [DVD]

父親たちの星条旗 期間限定版 [DVD]

 『硫黄島』と合わせて2部作。表象/リアルのズレに焦点を合わせた作品。同名ノンフィクションがベースとなっており、その実作者James Bradleyが父John "Doc" Bradley の秘密に迫るという大枠を持つ。
 発端は、Joe Rosenthalが撮影し、戦争に疲弊しきったアメリカ国民を再び戦争へ傾注させた、硫黄島星条旗を掲げる6人の男たちの写真。この写真を、アメリカの勝利を決定付けるものとして、大々的にあらゆるメディアが取り上げる。写真の利用価値に気付いた政府は、その写真に写った6人のうちの3人を、戦時国債購入を国民に訴えるため、全米をツアーさせる。ツアーの合間に実際の戦争がどのようなものだったのかを示す映像が差し挟まれ、「ヒーロー」たちは虚像と実像との間のギャップに苛まれながら、ツアーを続ける。次第に、残りの3人が国旗掲揚後にどのような運命を辿ったのかが明らかにされ、「ヒーロー」の3人のツアー以後の人生も綴られる。
 解題。 "flags" は狭義には、件の写真に映った国旗が擂鉢山に立てられる前に、別の国旗が立てられていたことを示す。しかし、広義には、硫黄島の戦闘に加わった生者・死者問わず全ての戦闘員がそれぞれの旗をそれぞれのやり方で立てた、つまりみんなヒーロー、という意味も込められていると考えられる。 "our" は戦後世代を中心とした戦争を知らないアメリカ国民を指し、 "fathers" は実際に戦争を戦った世代を指している。大戦の分水嶺としての硫黄島の戦いを世代間の分水嶺として見立てる図式は、『硫黄島』とも共通している。
 『硫黄島』が敵/味方の間の断絶、味方の間に走る亀裂、そしてイデオロギーと内面世界のギャップという戦争当事者の様々な溝を突くことで物語を駆動させているのだとしたら、『星条旗』は、戦争当事者と国民との間のギャップを前景化し、その仲介役となる3人のヒーローが両者の溝を一手に引き受け、苦悩するという形で物語が進んでいく。
 ヒーロー像の反復(祭典、彫像、お菓子など)= "corpsman" =戦闘の記憶
 ヒーローであることに耐えられないと同時に、ヒーロー像の再生産に伴う記憶の再生産に耐えられない
 "where is he" → "Iggy" 探し→息子探し
 失われた同胞を探す物語から語り手(の継承者)を探す物語へ
 表象/リアルから体験者/語りへ
 "Help" /「助けて」→ "Help" に応える→衛生兵を媒介としたnational memoryの再構築(癒し)=『硫黄島』からの切断
 その後の3人の物語が冗長
 Native Americanの処理
 他者理解なき自己理解
 物語/船団に回収されない転落した兵士

[追記] ひょっとして、『硫黄島』で惨殺されるアメリカ兵がIggy?