陽気なギャングのその1

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

 4人組の銀行強盗が逃走中に別の強盗に襲われ、すったもんだのあげく、また銀行強盗に出かける、というところで終わる話。疾走感があって、爽快。
 途中、強盗のうちの2人が不良少年グループに殺されようとしている少年を救出するも、別の大人がその少年を救出しにやってくる、という挿話がある。この挿話が、劇中劇のように、物語全体の循環構造を要約しているっていうことだろう。*1
 人生はなかなか思ったとおりにならない。やっとたどり着いたゴールはいつも何かの始まりだ。地球は勝手に回る。
 ところがどっこい、伊坂は、ふりだしに戻るギャングたちこそが地球を回す、と言ってのける。こういう無意味な毎日が地球なんていう大きな大義を回しているんだ、なんていうのは、開き直りか慰めにしかすぎないように聞こえる。けれども、たぶん地球が回るっていうのは、明日は明日の風が吹くっていうことじゃないのだろう。明日も今日と同じ風が吹くっていうことだろう。ぐるぐる回る地球とちょっと進んではふりだしに戻るギャングたちはまあそっくりだ。粋だね。

マシニスト [HD DVD]

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 『Stay』と同じく幻覚オチではあるけど、幻覚の描写がわりと細かい。『アメリカン・サイコ』のクリスチャン・ベイルが、30キロ体重を落として1年間不眠に悩む主人公役を演じている。極限の痩身が最大のみどころ。
 

*1:いや、ま、わざわざ説明せずとも、伊坂印、自家薬籠中の常備薬であります。