フリッカー式

フリッカー式 <鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫)

フリッカー式 <鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫)

 サリンジャーグラース・サーガを模した鏡家サーガの第一作。
 ある陰謀のもとにレイプされ、それがショックで自殺した(というような設定になっている)妹の復讐に燃える兄の物語。のはずが、実は兄の物語ではなかった。と書いてみて何を言っているのかよくわからないが、だってそんな話なんだもの。
 サブカルを華麗に織り込んでいるので、そちらに精通している方は楽しくてしょうがないだろう。『エヴァンゲリオン』を間接的にしかしらないので、引用元をウェブ検索で確かめてみたりもした。があんまり実りがあるとも思えない。「黄金の爪」ぐらいなら笑ってあげられる。
 「スタンガン百七十三秒間の刑」なんていう無意味な量的記述から、煙草の本数やセックスの回数をわざわざ書く村上春樹のほのかな体臭が薫る。文体も独特で面白い。物語も奇抜で面白い。さらっと読める。が、世界観についていけない私は、そうオッサン。他の作家をあたろう。