密室入門!

 

密室入門! (ナレッジエンタ読本14)

密室入門! (ナレッジエンタ読本14)

 ミステリ作家・有栖川有栖一級建築士・安井俊夫の対談本。
 まずはヴァン・ダイン天城一の密室定義を有栖川が紐解き、密室の構成要件を示す。次いで、40年来のミステリファンでもある建築家・安井がリードし、建築学的観点から密室の可能性について。どんどん密室化していく現代の住環境にも話は及ぶ。
 建築学的に密室を作ることはできない、とする安井の指摘が面白い。現実の住居は隙間だらけなので、密室をつくるのは難しい。
 しかも、床・壁・天井の3つが完全に密室を構成しているかどうかは、その外部からは論理的に証明できない、という哲学的な難問が立ちはだかる。完全な密室を作ろうと思ったら、鉄板をサイコロ状に溶接するしかない。最後の一枚の蓋を閉じた瞬間に密室は出来上がる。けれど、中を確認し、密室だと宣言するためには、密室を破らなければならない。つまり、密室が密室であるためには、それは(常に既に)破られていなければならない。シュレジンガーの猫みたい。
 目から鱗が落ちたのは、エレベーターは四角ではない、という指摘。エレベーターの内側に張られたカーペットを剥がすと、鍵のついた扉が現れる。その向こうには、人ひとりが屈んで入ることのできるぐらいの大きさの「トランクルーム」という隠れたスペースがあるらしい。大きな荷物を運ぶときに使うのだという。わくわくする。
 わくわくついでに。

 安井 ちょっと話を脱線させてしまうのですが、私が子どものときに読んだ本で印象に残っているトリックがあって。拳銃自殺をしているのに、付近に拳銃がない。実は拳銃に長い紙テープがつなげてあって、離れた小屋にいるヤギがむしゃむしゃとその紙を食べている。だから、死体の周りに拳銃がなかったんですね。

って、なんだそのバカトリック。誰の作品なんだろう。読んでみたい。
 

犯行現場の作り方

犯行現場の作り方

硝子のハンマー (角川文庫)

硝子のハンマー (角川文庫)