夏のとば口

 嬌声をあげながら横断歩道を駆けていく男の子を、彼のお姉さんだろうか、女の子が一喝。「うるさい、シゲキックス」。たぶん、「しげき」という名前なんだろう。
 そういえば、というか、「しげき」くんとは何にも関係なけれど、私には「ニシムラ」くんという友人がいた。彼の氏名には「シムラケン」がその他の文字に挟まれて、フルネームで、順番どおり隠れていた。「だっふんだ」しているウォーリーを探し当てるのは誰でも簡単なのだから、いい自己紹介ネタになりそうなものだが、彼の口から「だっふんだ」も「アイーン」も聞いたことがない。もったいない。
 帰宅すると、嫁がソファで寝ていた。風邪やらなんやらの体調不良で、早引けしてきたのだという。起きるなり開口一番、「のどが渇いたからメロン食べようっと」、ってお前はマリー・アントワネットか。水を飲め、水を。と突っ込む間もなく、メロンを切り分けて食い始めた。私もいただく。うまい。
 今日も暑かったなあ。
 余談。『1Q84』を読みはじめた嫁。しかしタイトルを「IQ84」といつも言い間違える。そういうエクセントリックな読みも可能なテクストなのか。自分のIQが疑われるぞい。