2009年物語私的十傑

2009年を小説で振り返る。
 
 文体のドライブ感と想像力の広がりが圧倒的だった。

地図男 (ダ・ヴィンチブックス)

地図男 (ダ・ヴィンチブックス)

 
 短編集。「Ωの聖餐」がとりわけ巧緻でグロテスクで絶佳。

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

 
 漫画家志望だった作者さんの本領発揮でそれはそれはアニメ的なのだけど、アニメを飛び越して神話といってもいいぐらいの眩しさ。こんな嘘のつき方があるのかと感動した。

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)

 
 これもまた具象を突き抜けて、父性の神話と化した稀有な例。読み終わると、いまさらながら、昭和はもう終わったんだな、と痛感する。

血と骨〈上〉 (幻冬舎文庫)

血と骨〈上〉 (幻冬舎文庫)

血と骨〈下〉 (幻冬舎文庫)

血と骨〈下〉 (幻冬舎文庫)

 
 若年性アルツハイマーについて。映画にもなったらしい。涙と笑いのさじ加減が絶妙。味をしめたか、近年、痴呆ネタが目立つような・・・。

明日の記憶 (光文社文庫)

明日の記憶 (光文社文庫)

 
 ハードボイルド探偵もののパロディ。終盤、どこに着地するものか悩んだ感じだが、中盤まではとにかくよく笑った。

ハードボイルド・エッグ (双葉文庫)

ハードボイルド・エッグ (双葉文庫)

 
 荻原浩が書いたミステリではたぶんいちばん。口コミがテーマ。プロッティングも仕掛けも見事だけど、おしゃべりだけを生身から切り離して人格化したような、女子高生のリアルさが印象的。

噂 (新潮文庫)

噂 (新潮文庫)

 
厭なヤツを書かせたら道尾秀介と双璧を成す歌野晶午。まず、ジョン・レノンにちなんだ命名のマテリアル感がたまらない。照音。これが嘘っぽく響かないゼロ年代のおぞましさ。

絶望ノート

絶望ノート


 『鬼の跫音』にしても『向日葵の咲かない夏』にしても真っ暗な話ばかりの道尾さん。だけど、これはコン・ゲームの話なのでほどほどに明るい。

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb


 読書会をめぐる、ちょっとゴシックな雰囲気漂う短編集。素直な心をもっている私は、きちんと騙してもらえた。

儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴