一番は生でかぶりつき

 2月27日 PL ウェストハムvsリヴァプール@アップトンパーク
 古くてコンパクトで猥雑で町並みに溶け込んでいて、とても素晴らしいスタジアム。オリンピック後には陸上トラックつきのオリンピックスタジアムに移転するようなので、ここでゲームが見られるのもあと僅か。残念。

 
 ウォームアップ中のリヴァプールの選手たち。野次が飛び交うなか、和気あいあい。


 レジェンドのお孫さん(?)がピッチの周囲を一周。観客はスタンディングオベーションで迎える。右手に見えるはリヴァプールサポーターたち、空気がビリビリ震えるほどの大音声でスカッドを鼓舞し、我々の周りに陣取るハマーズラッズとチャントでやり合う。しかし始めこそ意気軒昂に見えたKOPたちもゲームの進展に応じて意気消沈、ハマーズサポーターたちの、子供には聞かせられない四文字語と "Who are you" の大合唱を一方的に浴び続ける。 "shakin' a baby" と音頭をとるおばさんの、すっかり酒焼け、するめのように乾いたシャウトが忘れらない。そして揺れるスタジアム。プロレス会場のようにストンピングかます。カウント2.9。ドドドドド。たまらん。


 入場シーン。リヴァプールにとっては悪夢の始まり。パーカーのスーパーゴール、あと誰だったかが決め、それから止めにカールトン・コールリヴァプールは赫赫と燃えるハムにお小水をちょろっとかけて去るのみ。ゲームとしてはこれが一番興奮した。

 
 3月5日 PL アーセナルvsサンダーランドエミレーツ 
 ビッグクラブになるとスタジアムもでかい。収容人員は違っても、カンプノウと構造も外観もさして変わらない。町並みからは浮いている。どこから見ても、あれだね、とすぐわかるランドマーク。クラスにたったひとりのバスケ部、ポジションはもちろんセンター。
 メガストアで嫁はもろもろ購入。道路標識まで買って帰る。どんな研究室になるのだろう。


 嫁のアイドル、トマシュ・ロシツキーはサブメンバー(現地ではロジツキーと呼ばれていた)。股関節とハムストリングをきちんとストレッチ。立て続けの怪我で長い間戦列を離れた経験があるためか、偉い。


 まだまだストレッチ。ムードメイカー、エブエは隣でチンポジチェック。偉い。 


 っていつまでやっとんねん。結局、メモリーにはロシツキーのストレッチが延々と記録されていた。後半、交代出場。


 試合自体も温まらないままスコアレスドロー。誤審や運に見放された場面も数あれど、3日後に迫っていたバルサ戦のことで頭が一杯だったのだろう。写真はしょっぱい試合の後でもサポートに対する返礼を忘れないジャック・ウィルシャー19歳。そして未来のキャプテンを迎えに行く重鎮エマニュエル・エブエ28歳。エブエは気配りの人、誰の話にで耳を傾ける人。例えば、北朝鮮のコーチの指示とか→http://www.youtube.com/watch?v=yBTubYyuyvg


 もうひとつもの足りない試合だった。歌も少ない。大きなスタジアムは迫力がもうひとつ。それでもご満悦のロシツキー


 
 3月9日 CL トッテナムvsACミランホワイトハートレーン
 清楚で瀟洒な住宅街を「オーバーザトップ」の悪役みたいな風袋の皆さんと一緒に歩く。ほとんど住宅街と同化したスタジアム。こういうのがいい。


 トッテナムギャラスを中心にエグザイル状態。


 ミラン。こちらは中心なく自由気ままにエグザイル状態。真ん中あたりにズラタン・イブラヒモビッチ


 ミランズラタンロビーニョを中心にいくらか決定機をつくるも決め切れず。トッテナムはうまくゲームをコントロール。ゲームはスコアレスドロー。しかしトッテナムはアウェイで勝利しているため勝ち抜け。歓呼の雄たけびが飛び交う。試合を通じてとにかくよく歌っていた。ミランティフォージたちも少数ながらとてつもない迫力で歌う。そしてここも揺れる。ストンピング雨あられ。今回のフットボール観戦で最も印象に残ったスタジアム。


 一番盛り上がったところを撮り逃しているが、試合後の合唱。


 3月12日 FAカップ マンUvsアーセナルオールドトラッフォード
 当初、予定にはなかった。が、3日前ぐらいにだめもとでチケットを探してみたら、簡単に見つかった。ゲームを俯瞰できる二階席ばかりで観戦してきたので、今度はゲームがわからなくても真ん前で見てみたい。そう思って一階席の最前列、砂被り席を選んだ。一泊二日、中途、チェスターとオクスフォード観光を組み込んだ強行日程。


 ここも巨大スタジアム。騎馬警官がいるのがイングランド流。


 マンUの選手たちはハーフウェイラインの向こう側だった。遠い。 


 しかし、参謀パット・ライス。


 さらに、ロビン・ファン・ペルシー。サインをねだってもよさそうな距離にいる。しかしここはマンUホーム。左隣には年齢は私の半分ぐらいだろうが、体と気概は1.5倍の青少年たち。さらに後ろには、すでに8時間はウィスキーやらエールやらを溜めこんできているのだろう、馥郁たる臭いをぷんぷん振りまいているオヤジ。事実、試合中、嫁の頭にこのオヤジの手がパンパン当たる。アルコールに浸った魂はとっくに気化しているのだろう、ほとんど何を言っているのかわからない。左手にはアーセナルサポーター席。


 ナスリにロビンにサニャ、ウィルシャーその他。みなさん、体格は普通のサッカー選手。


 右、アンドレイ・アルシャヴィン。たぶん、身長は私と同じぐらいだろう。しかし太ももからふくらはぎにかけての筋肉が他を圧していた。だからこの体でもノーステップで強烈なシュートが撃てる。


 99年、FAカップで両チームが対戦したとき、ハーフウェイライン付近からドリブルで切り込んでゴールを決めてしまったギグス。伝説のゴールを喚起して相手を煽るマンUサポーター。


 後半から投入されたロシツキー。ゴール前の決定機を逃す場面も。左端はギグス。後半から投入される。でも反対側でプレイしていたので遠かった。残念。


 MOM、ファン・デル・サール。決定的なシュートをことごとく跳ね返す。今季で引退。年上の選手がどんどんいなくなる。

 
 ロシツキー、そしてスコールズ。スピードや運動量は衰えたとはいえ、技術は健在。絶妙のタイミングでピッチの半分の距離を飛び越す長く正確なキックに拍手が起こる。


 ゴールを決めたルーニー。サイドの一対一、ルーニー対サニャは弩迫力。ファン・ペルシーやナスリのテクニックも手が届きそうなところで堪能。加えて、タッチを割るボールをキャッチする幸運に与る。もう今年はなにもいいことなさそうだ。隣でheaderかまそうと待ち構えていた青少年が歯噛みしていた。ごめんよ、と言うと、next time, next timeと苦く笑った。当然次はなかった。


 嫁が撮ったベストショット。「夢の劇場」の異名をとるスタジアムで少しだけ夢を見た。日本のことを思い出してすぐに夢から覚めた。