完璧のための横紙破り

 ――その通りです、旦那――たしかにここの所にまるまる一章抜けています――そしてそのためにこの書物にできた十ページの穴は、――が製本屋は阿呆でも悪党でも頓馬でもありません――それにこの書物の不完全さが(すくなくともこのことのために)すこしでもふえているのでもありません――それどころか、この一章がないほうが、あった場合にくらべて、この書物の完全さ完璧さを増大させているのです。(『トリストラム・シャンディ 中』 112)

 ポオ「陥穽と振り子」における穴。深淵の挿入によってその周囲環境に意味は生まれる、あるいは意味は強化される。ポオ「モルグ街の殺人」におけるデモクリトスの否定、表面の絶対化。近代と表面。オラウータンの表面性。表面と深淵のあいだに「関係」はあるのか。