2012-02-10から1日間の記事一覧
ところで私は(たいへんやせっぽちですから)意見がちがうので、大いに動き続けていることはそれだけ生きがいのあること、それだけよろこびを感ずることであり、――じっとしていること、あるいはノロノロと進むことは、つまり死であり地獄に落ちることだと思…
このことを正しく認識していただくために――どうぞペンとインクをとりよせて下さい――紙はお手もとに用意してあります。――そこでどうぞお席におつきになって、この女性の姿をお心のままに描いてみて下さい――できるだけあなたの恋人に似せてでも――奥さんにはあ…
ところで、満腹で書いている時の私は、――生あるかぎり断食の状態でものを書くなどということはもう二度とあるまいという気持でペンを走らせるのです。――言いかえれば、この世の心配苦労もあらゆる恐怖も、すべて忘れて書くのです。――身に持っている傷跡の数…
――しかし人間だれしも欠点は持っているもの! しかもこの場合ヨリックの欠点をさらにいちだんと小さなものにし、ほとんど拭い去ってしまっている一事というのは、問題の一句はすこしのちになって(ということはインクの色合いがほんのちょっとちがうのでわか…
人間には自分も気づかぬ無数の穴があって、とさらに父は続けて、するどい眼力の者ならその穴からたちまちその人の魂を見透すことができる。――だから分別のあるほどの人なら、部屋に入ってきた時に帽子をぬいで下におくにも、――あるいはまた出ていく時に帽子…
――その通りです、旦那――たしかにここの所にまるまる一章抜けています――そしてそのためにこの書物にできた十ページの穴は、――が製本屋は阿呆でも悪党でも頓馬でもありません――それにこの書物の不完全さが(すくなくともこのことのために)すこしでもふえてい…
――幕を引くんだ、シャンディ!――はい、引きました――ここんところで紙の上に線を一本引くんだ、トリストラム!――はい、それも引きました――そこでほら、新しい章というわけです!(『トリストラム・シャンディ 中』 71) 作品を区切ること。パンクチュエイション…
サドの『悪徳の栄え』『ソドム120日』。ゴンクール兄弟。メルヴィルとホーソンの美学が離反する分水嶺。「モラリストなり」。(『猟奇博物館へようこそ』 67-72)
犯罪とは、内面から外部へ移すこと、明るみに出すこと、はては清算することにある。 というのも、犯罪はそれまでたくさんある可能性のひとつ、けっきょくのところひとつの夢だったのだ。 犯罪者というのは、事実しか勘定できず、存在しないものはゼロと見な…