運動と停滞

 

ところで私は(たいへんやせっぽちですから)意見がちがうので、大いに動き続けていることはそれだけ生きがいのあること、それだけよろこびを感ずることであり、――じっとしていること、あるいはノロノロと進むことは、つまり死であり地獄に落ちることだと思うのです――(『トリストラム・シャンディ 下』 36)

 近代小説と呼ぶにふさわしい。歩くこと、立ち止まること、足踏みすること、これらは反/前近代的であり、ノスタルジックな深淵を構成する。では、近代を超克する小説は・・・運動/停滞から離れた地点に存在するのではないか。たとえば、見る、聴く、踊る、寝る。書かないということ、書けないということ。たとえば『バートルビーと仲間たち』。