歪笑小説

 

歪笑小説 (集英社文庫)

歪笑小説 (集英社文庫)

 東野圭吾の小説で唯一追いかけているシリーズ。怪笑、毒笑、黒笑、そして歪笑。
 当初はブラックな笑い全般がテーマだった。今ではすっかりギョーカイの内幕諷刺群像劇というか、そういうところに軟着陸した。
 安定している。爆笑はとれないけど、苦笑はとれる、というか。ちょっぴりほろりとくるような話のほうが印象に残る。毒が薄れてきた?
 『虚無僧探偵ゾフィー』の作家も「娘さんを下さい」にまで至り、作家の引退会見に、ゴルフ接待に、口うるさい伴侶に、新人賞制定の影で蠢く深謀遠慮に、小説誌の存在意義というこれまた素朴だけどもっともな疑問に・・・。
 巻末についた広告は東野の創作で、これがまた揮っている。東野も苦労したもんなあ、「直本」賞獲るまで。苦労した分だけ、作家たちへのやさしさを忍ばせた広告になっている。
 それにしても虚無僧だと思ったらゾフィーで、ゾフィーだと思ったら虚無僧だった、ってどんなオチなのだろう。