速さの哲学

しかし私はこれこそこの世の中で、快速に旅をする最上の方策だと信じます。苦虫をかみつぶした気持ちでいれば、何ものもあまりこちらに好意を持つようには映りません。――つまり引きとめるものがほとんどあるいは全然ないのです。(『トリストラム・シャンディ 下巻』 44)

 いつの時代でも旅人の武器は不機嫌に限る。
 心がけ次第で外の世界と自分との関係が断絶する、あるいは両者が無関係になる。そうして速さはもたらされる。
 速さは、身体的な運動でも、風景の推移でもなく、気分である。